HP用写真、撮影レポート。

初夏の太陽とさわやかな風が気持ちの良い5月27日(土)、ひきたよしあきのホームページ(以下HP)用写真の撮影が行われました。

HP用とはいえ、講演会や書籍など、「ここぞ」という場面でも使われる大切な写真です。そのため、撮影は「人物の内側にある”魅せる力”を最大限に引き出すフォトグラファー」として知られ、宇多田ヒカルや安室奈美恵、ジャン・レノなど数多の国内外の著名人を撮影してきた福田秀世氏にお願いをしています。福田さんは日本写真家協会(JPS)、日本広告写真家協会(APA)にも名を連ねるこの道40年の名フォトグラファー。信頼して身を任せられる方です。

朝9時、福田さんのハウススタジオ「Studio BRICK」にSmileWordsの仲間たちと福田さんが集合。ひきたよしあきは最近お気に入りのBOSSのスーツに白い革のスニーカーで登場です。

しばしの歓談のあと、撮影スタート!

まずは落ち着いた色調の淡いピンクを背景に椅坐位で。SmileWordsのシンボルカラーを意識してくださったその心づかいに感謝です。ひきたよしあきのピンクのシャツとよく合います。

撮影中、テンション高く声掛けをしてくれる福田さん。それにつられて心も体もほぐれて様々にポーズを取る笑顔のひきたよしあき。被写体の魅力を引き出すテクニックはさすがです。テンポよく進み、ここでの撮影はなんと10分ほどで終了。

次は場所を変えて立ちポーズの撮影です。

「つま先をカメラのほうに向けて。上から引っ張られるイメージで立って。顎を引いて胸を張って。肩甲骨を意識」

福田さんの指示に、頑張ってポーズを取るひきたよしあき。

撮られた写真をモニターでチェックし「すごい!めちゃくちゃいい!ふだんの生活では絶対しないようなポーズなのに、こんなにカッコよく、自然な姿に撮れるんだ!さすが!」と興奮気味です。

上半身と全身、ベージュバックと白バック、衣装をチェンジしたりとバリエーション豊かに撮って、ここでの撮影は45分ほど。

「確か屋上もあったよね。天気もいいし、屋上でも撮りたいな…」とのひきたよしあきの言葉で、今度は屋上に移動です。Studio BRICKには4つのスタジオと屋上があります。

屋上には、高く上がった太陽から燦燦と陽射しが降り注いています。すぐ下をたゆたう隅田川とどこまでも広がる青空、視線を変えれば高層ビル群も望むことができる、開放感のある気持ちの良い場所です。ときおり、東京湾から南風に乗って運ばれてくる潮の香りに、ひきたよしあきもリラックスしている様子。

ここでは直射日光が当たらないようにスクリーンで軽く影を作り、レフ版をあてて自然光での撮影です。立ちポーズや、手すりに肘をかけての決めポーズ。さすがの出来栄えです。

終始笑顔が絶えない楽しい撮影会も、みんなで記念撮影をして終了。この日撮った写真はみなさまにも近々お披露目できると思うので、楽しみに待っていていくださいね。

きちんとした撮影は今回で3回目。
初回は2020年4月。新型コロナで初めての緊急事態宣言が発出された街は閑散とし、ひきたよしあき自身もこの先が見通せず憂いの中での撮影でした。漠とした不安を抱く毎日でしたが、それでもできることから進めようと、周りの人たちに助けられ、励まされながらHPを作るところから始めました。福田さんとはHP制作者を通してこのときに出会ったのです。

2020年4月のひきたよしあき。

2度目の撮影はその翌年の2021年4月。いまこのHPに掲載している写真です。たった1年の違いなのに、白シャツにネクタイを締め、ポケットチーフを刺していた2020年の姿から、ピンクやブルーといった自分の好きな色のシャツにノーネクタイ姿。ヘアスタイルも顔つきもすっかり変わって、別人のようです。
2020年と背景は同じなのにまったく違う印象。

そして今回。前回との一番の違いは自分の会社を作ったこと。SmileWordsのバッジをつけた姿を撮りたかったのです。いまではすっかり先生らしい顔つきになりました。撮影を通してたくさんの人たちを見てきた福田さん曰く、会った人のエネルギーによって人は変化していくのだとか。
撮影終了後、全部の写真を通しで確認する福田さんとひきたよしあき。

来年はどんな顔になっているのか、楽しみです。
出会う人たちみなさんと良い波動の交換ができて、今日よりももっといい顔になっていたらいいな、と思います。

福田秀世オフィシャルサイト(外部リンク)
Studio BRICK(外部リンク)
福田秀世さんに撮影していただける写真館Studio GoodLife(外部リンク)

神田祭の神幸祭で福をいただきました。

ひきたよしあきの会社SmileWordsは、日本橋室町一丁目にあります。日本橋三越まで歩いて5分もかからない便利な場所で、近くには、蕎麦屋、天ぷら屋、寿司屋、鰻屋と江戸情緒を色濃く残す食べ物屋さんがあります。

5月13日(土)、神田祭のメイン神事「神幸(しんこう)祭」がこの室町一丁目でも繰り広げられました。神田明神の氏子として、地元の方たち、この地域に勤める方たちが勇壮華麗な行列を作り、御神輿を担いで町内を練り歩きます。

当日、珍しく仕事のなかったひきたよしあきは、三越の前からあがる子ども神輿に遭遇。担がれた御神輿は、三越の店内に入っていきます。驚きながら立ち会っていると、お客様もお店の人も笑顔いっぱいで大喜びです。店中が「福」に満たされたような心持になり、こちらまで自然と笑顔になります。

日本三大祭りの一つ「神田祭」の歴史は古く、神田明神が創建された天平2(西暦730)年から続いていると言われます。江戸幕府は開府以前から、収穫祭に近い祭礼をおこなっていたとされ、まさに江戸幕府と庶民の心が一体となるお祭りでした。

その歴史を今につなぐ町内のみなさんの法被(はっぴ)を見ると、江戸時代から続く老舗の名前がずらりと並んでいます。その中で、信用金庫や不動産会社に勤める人たちが揃いの法被を着て祭りの手伝いをしていました。

人混みが嫌いで、これまでは好んで祭りに参加することはありませんでしたが、事務所の前を何度も御神輿が通り過ぎ、この町で暮らす人たちが、声を上げ、手を叩き、喜ぶ姿を見れば心が華やぎますし、厄が祓われていくような清々しさも感じます。

ふと見ると、ご高齢の女性の目がうるんでいます。法被姿できりりと紅をさしたいかにも「江戸っ子」という風情の女性です。その女性の肩に手を置いている恰幅のいい男性は息子さんでしょう。お腹は出ているけれど、これまた祭り衣装が似合います。

「おばぁちゃん、よかったね!」

と町の人が声をかける。

「4年ぶりですから!4年ぶり!」

と息子のカラッとした声が響く。

2年に一度開催される神田祭は、新型コロナの影響で前回は中止。4年ぶりの開催でした。女性の喜びもひとしおだったのでしょう。

御神輿を担ぐ人、練り歩く人にマスクをつけている人はほとんどいません。あの忌まわしい自粛規制が解かれた喜びを神田明神に御礼している、そんな風にも見えました。
一日中、祭囃子を聞き、事務所の窓から神輿の写真を撮ったりして、なんとも幸せな一日。

時折雨も交じる曇天ではありましたが、祭囃子が通り過ぎる頃、吹く風の中に夏の匂いがしたような気がしました。

【特別企画:担当編集者インタビュー】ひきたよしあき執筆、講師、監修『1日15分「言語化力」がグンと高まるコース 思いや考えが確実に伝わる30のメソッド』(PHP研究所) ※10%お値引きで受講できる耳寄り情報も掲載。

4月の発売以来、好評をいただいているひきたよしあき執筆、講師、監修の『1日15分「言語化力」がグンと高まるコース 思いや考えが確実に伝わる30のメソッド』(PHP研究所)。

今回こちらが、このブログやひきたよしあきのFacebookなどをご覧になった個人の方を対象に、10%のお値引きで受講いただけるようになりました

そこで今回は、教材制作からこの嬉しい特典まで、すべてにご尽力いただいた担当編集者さんに、教材や収録講義についてインタビュー。

10%オフでご受講いただける方法はページ末にお知らせしてありますが、あわてずに。
まずは最後までご一読いただき、ご納得されたらお申込みくださいませ。

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「ひきた先生にこの企画を依頼したのは、去年の5月ごろ。学生時代に朝日小学生新聞に関わるアルバイトをしていたこともあり、『大勢の中のあなたへ』をはじめ先生の著書はほとんどすべて読んできました。先生の本は優しさにあふれているんです。2つの意味で優しいと感じる部分があって、1つは文体の優しさ。誰が読んでもわかりやすく書かれています。もう1つは読者の心に寄り添う、伴走してくれるような優しさをずっと感じていました。

ひるがえって、今回出版した法人向けの通信教育というジャンルは、所属する企業の人事担当者から薦められて受講する方も多く、なかには文章を読みなれていない方や、コミュニケーションに関して初歩的な悩みを持たれている方もいらっしゃいます。そういう様々な背景をお持ちの方や事情の中でしっかりと学んでいただくには、先生のような優しさがないと成り立たないジャンルなんです。

そのようなわけで、ひきた先生監修の教材を作りたいと思いつづけていたところ『コロナ禍のリモートワークで社員間のコミュニケーションに課題を感じる』『自分の思いや考えをしっかりと言葉で伝える力を伸ばしたい』という声を多くの企業からいただいて、このタイミングしかないと思い依頼させていただくに至りました」

教材制作にあたり、ひきたよしあきの文章を校正することもあった担当編集者。しかし、どこを直したかわからないくらい文章を理解してくれていることに、ひきたよしあきも厚い信頼を置いています。

コミュニケーションに自信が持てないがために仕事や人生に前向きになれない、そんな、どの世代の方たちにも違和感がない作りになっていますが、とりわけ、コロナ禍で人との交流に待ったをかけられてしまった20代前半の方たちへ届くことを意識して作りました。学生も社会人もコミュニケーションに苦労しているという話を、先生も私もたくさん聞いてきましたので」

動画は1話が10分から15分ほど。忙しい方もタイパ(タイムパフォーマンス)重視の若い世代も、スキマ時間などに気軽に学ぶことができそうです。講義動画と並行してテキストでも学ぶことができるので、記憶の定着もしっかりできてより教育効果の高い学びや多様な学びが可能です。

各講義の終わりには「言葉のお守り」と題して、心が強くなれる言葉とその言葉の解説が添えられ、担当編集者とひきたよしあきの優しいまなざしを感じます。

最後に苦労話を伺いました。
「苦労話というより、苦労させてしまった話になるんですが(笑)、内容を固める段階で、先生にご負担をおかけするようなことを2つお願いしました。

1つは、1話に必ず1つ、ワークのコーナーを設けていただくこと。単純にテクニックやノウハウを伝えるだけではなく、それを実践する場です。そのためのトレーニングを考えていただき、解説をつけていただきました。後日、先生も『あれは大変だった』とおっしゃっていましたが、おかげで書籍ではできないような、通信教育ならではの内容になったのではないかと自負しています。

もう1つもけっこう大変なお願いで、最後の章をすべて使って『心と言葉』というテーマで解説をお願いしました。結局、人が発する言葉はその人自身の有り様と密接に関わってくると思っていて、単純にテクニックやノウハウを教えるだけではなく、最後にきちんと心と向き合えるような教材にしたいと思ったんです。『オレは心の専門家じゃないから苦労した』と先生はおっしゃいましたが、そこでは最終的にどう生きるか、どう死ぬか、という深い話までしていただいて、それが非常に感動的な内容になっています。僕自身もそれを聞いてちょっと鳥肌が立ったし、動画編集をしながら泣きそうになりました

先生に苦労していただいたおかげで、本当に、自信を持ってお届けできる作品になりました。全国から講演依頼が絶えないひきた先生のメソッドを多くの方にお届けしたいです」

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ひきたよしあきのコミュニケーションメソッドがたっぷりと入った講座(テキストは、書籍よりも少し大きなA4サイズ、136ページ。1話15分前後の講義動画が30本)が、一般受講料 10,450円(税込)のところ、10%オフの9,405円(税込)でご受講いただけます。(このブログやひきたよしあきのFacebookなどをご覧になった個人の方限定

■■お申込み方法■■

1)こちらのページ(外部リンク)の「個人:申し込み >」をクリック、またはタップ。
2)「STEP2お届け先・受講者情報の入力」フォーム内の「備考欄」に「ひきた先生からのご紹介」とご入力ください。
3)「お申し込み完了」後、特典価格で受講いただけます。

この件についての不明点などは、下記メールアドレスまでご連絡をお願いします。(SmileWordsではご対応できません)
通信教育担当者:sangyo@php.co.jp

4月の活動報告。

5月になりました。
新緑があふれてまぶしいほど。
吹く風はさわやか、暑くもなく、寒くもなく、なにをするにも心地よい季節ですね。

4月もたくさんのご縁をいただきました。
ハードなときもあったけど、ごほうびもいただけた、そんな1ヵ月でした。
ありがとうございます。

4月3日(月)マスメディアン 講演
4月11日(火)大阪芸術大学 初講義
4月13日(木)浄土真宗 親鸞聖人ご誕生850年・立教開宗800年慶讃法要
4月14日(金)オクタウェル(管理栄養士)向け講義
4月16日(日)朝日小学生新聞 WEB配信
4月20日(木)26日(水)2023年度 公益財団法人日本サッカー協会 S級コーチ養成講習会 研修
4月21日(金)ハナマルキャリア総合研究所 講演
4月27日(木)青森県学校栄養士協議会 講演
4月28日(金)schoo 講義

青森県学校栄養士協議会で講演をしました。

4月27日(木)、青森県学校栄養士協議会のお招きで講演をしました。タイトルは「一人ひとりの力を引き出す言葉がけ」。

青森に入る26日(水)は、朝から午後まで千葉県の海浜幕張にある高円宮記念JFA夢フィールドで「日本サッカー協会S級コーチ養成研修会」の講師を務め、終了後、東京へ戻って新幹線で青森へ。

大学の卒業旅行が、東北地方を北上し津軽から北海道の知床岬まで行くというものだったので、青森は遠いという印象を持っていたひきたよしあき。

19時近くの新幹線で東京を出て、その日のうちに青森に着くことがなんだか不思議な気分です。青森がこんなに身近になっていたことに驚きます。
今年の青森は、例年よりも早く桜が咲いてしまったそうです。桜目当てで訪れたと思われる外国人観光客もたくさんいて、なんだか気の毒に思います。それでも、新緑と遠くに見える八甲田山のコントラストはとても美しく、空気も澄んでいて、細胞がリフレッシュするかのようです。
会場に着くと、招聘してくれたみなさんが温かく迎えてくれました。

「これ、りんごのお茶。こちらが長芋のお菓子。北海道に抜かれるまで、長芋の生産量は青森が1位だったんです」

やさしい語り口に、心がほっとします。
会場には、学校給食の栄養士さんを中心に100名近い人たちが集まってくださいました。女性が大半です。

「低学年と高学年では、接し方も違う」「声かけの仕方がむずかしい」といった悩みを聞きながら、

世代の違いによる価値観の相違。
今の時代に必要な話し方の極意。
長所を見つけること。
ほめることの大切さ。

などについて90分間語りました。

教育と健康に携わる仕事柄からか、みなさんとても真剣で、話のメモを取る人の数はこれまで経験したことがないほど。そのまっすぐなまなざしに、こちらが感動してしまいます。
終わると、ビッグなプレゼントが待っていました。

ひきたよしあきが太宰治好きと聞いた理事長の佐藤さんが、休館日であるにもかかわらず「近代文学館」を見せてくれるというのです。

太宰治の生原稿やノートなどが展示してあると聞いて、胸が高鳴ります。学生時代、それを見たさに津軽をつぶさに回ったのですから。
誰もいない静かな近代文学館で、『女生徒』を書くための草稿メモ、『人間失格』の青森に関する箇所の書かれた生原稿、そして太宰治が使っていたエヴァーシャープというアメリカ製の万年筆を見せていただきました。
しかも、こちらでしか買い求めることのできない草稿メモに関する研究論考までいただいて。解読するのが楽しみでなりません。

日にちを置かず、大阪、海浜幕張、青森でかなり大きな仕事を頑張ったひきたよしあき。太宰治の万年筆は神様からのごほうびかもしれない、そんな気持ちにさえなります。
帰りの新青森駅で、太宰治が大好きだった「筋子と納豆」の入った丼をいただき、夕食用にと太宰治が好きだったものばかりを詰めたお弁当を買い求めました。

「桜が散ってもね、青森はこれからりんごの花が咲くんです。白に薄いピンクの混じった花の下にタンポポの黄色が咲き乱れる。本当に美しいですよ」と写真を見せてくれた佐藤さん。
また、佐藤さんと太宰治について語り合いたい。いつの日か、この近代文学館で太宰治に関する講演をしたい…そんな夢を胸に、東京に向かう新幹線で帰途につきました。

日本サッカー協会 S級コーチ養成講習会で講義をしました。

4月20日(木)、26日(水)の2日間、高円宮記念JFA夢フィールド(海浜幕張)で開催された「2023年度 公益財団法人日本サッカー協会 S級コーチ養成講習会」の講師として講義を行ってきました。

S級ライセンスはJリーグの監督に必要な最上位資格。A級ライセンス保持者で、トライアルに合格しなければ受講できないという厳しいものです。したがって受講するメンバーは誰もがその名を知るレジェンドばかり。

内田篤人(34=U-19日本代表ロールモデルコーチ)
大黒将志(42=G大阪ユースコーチ)
大塚真司(47=甲府ヘッドコーチ)
小野智吉(43=横浜FCユースコーチ)
北嶋秀朗(44=クリアソン新宿ヘッドコーチ)
金明輝(41=町田ヘッドコーチ)
佐藤由紀彦(46=東京コーチ)
島田裕介(41=大宮U-15コーチ)
田中遼太郎(33=福岡コーチ)
中後雅喜(40=東京Vジュニアユースコーチ)
塚原真也(37=FC大阪強化ダイレクター)
津田琢磨(42=栃木シティヘッドコーチ)
仲野浩(43=JFAコーチ)
中村憲剛(42=U-16日本代表ロールモデルコーチなど)
埴田健(40=品川カルチャークラブヘッドコーチ)
平川忠亮(43=浦和ユースコーチ)
平塚次郎(43=湘南U-18監督)
明神智和(44=G大阪ユースコーチ)
村上佑介(38=長崎コーチ)
本橋卓巳(40=松本U-18監督)
=敬称略

送られてきた名簿を見て、「嘘でしょ?」という気持ちとうれしさが入り混じり、喜びと不安で胸が押しつぶされそうになるひきたよしあき。

自分を奮い立たせて迎えた初日の20日は、この季節の美しさをすべて集めたような晴天。

「夢フィールド」に降り立ち「あぁ、今日この瞬間は一生の思い出になるな」と感慨深く思います。

会場に案内されると、レジェンドたちはちょうど食事中。それぞれにお弁当やコンビニのおにぎりを口にしていました。

「みんな、黒い…そして、大きい…」というのが第一印象。驚き、たじろいでいると、みなさんがこちらを向き「こんにちは!」と声をかけてくれました。その白い歯と笑顔の爽やかさ。

「ああ、これがスーパースターなんだ」と、憧れと喜びがこみ上げてきます。

講義は、20日が90分、26日が90分×2回という構成です。

決してサッカーに詳しいとは言えないひきたよしあきですが、「憧れていては、超えられない」と自分に言い聞かせ、通常の講義と同じ心持ちで話しはじめます。

20日の講義では、先のWBCで語った大谷翔平の言葉を分析。「なぜ、彼の声がけが世界中の人々の心に響いたのか」を紐解きます。

正直、日本を代表するサッカー人である彼らに向けて野球の話をしていいものか逡巡しましたが、決勝戦を前に大谷翔平がメンバーにかけた言葉――励ましの真髄が詰まっている「PEPトーク」――は競技の垣根を超えた普遍性があると思い一生懸命話しました。

真剣に耳を傾けるサッカーのレジェンドたち。まったくの杞憂でした。

彼らにも「3連敗したチームの仲間に声をかける」という想定で実践をしてもらったところ、驚くほど、力強く、的確で、心を躍らせる言葉を語りかけてきます。

プロというのはすでにこの域に達しているのだと、言葉の力のすさまじさに圧倒されました。

26日は、全員に「全日本の監督に就任した際に選手及びマスコミ、ファンに向けてのスピーチ」を語ってもらいました。

その際、「自分のめざすサッカーの方向性を必ず入れること」「チームのキャッチフレーズをつけること」「3分間でスピーチすること」の3つを約束ごととしました。考える時間は20分。

誰一人逸脱する人がいなかった。全員が、チームのキャッチフレーズを考え、方向性を3点示し、3分以内に簡潔に明瞭に話をまとめます。

ここにその内容を書くことができないのが残念ですが、多くが、

日本の子どもたちを笑顔にしたい。
日本の活気と誇りを取り戻したい。

というベースの上に、「勝つことへのこだわり」を語ってくれました。
これが「日本を代表する」ということなのだと、こちらの方が学ぶばかり。

それにしても、とにかくみんな、とても優しい。
廊下で会えば、頭を下げて笑顔を向けてくれる。

川﨑フロンターレで活躍した中村憲剛さんが、ひきたよしあきの住まいが川﨑と知って「梶が谷ですかぁ!」と言って握手をしてくれる。

内田篤人さんとのツーショット写真を撮る際、スマホに貼ってあるSmileWordsのロゴとひきたよしあきの顔を見比べて「似てますねぇ」と、笑顔を向けてくれる。

そのひとつひとつが、濃縮された思い出になり、これからの活動の糧になりました。

サッカーを通じて、みんなを笑顔にしたい。
S級コーチたちとその思いを、多くの人に伝えていきたい。

このたびは、素晴らしい経験をさせていただきました。
ありがとうございました!

S級コーチ養成講習会2023 Module1・集中講習1 受講者レポート Vol.2(外部リンク)

【特別企画】ひきたよしあき×類塾鼎談「読解力と愉快力 〜みんなが笑って暮らせる国へ〜」第5話(最終話)「イタリアの校長先生の言葉/好きな色を自由に決められることが勉強/みんなが笑って暮らせる国へ」

3月25日に開催された類塾×ひきたよしあき特別講演会「親も子も話すこと、書くこと、自分が好きになる!〜言葉のマグネットで自分の言葉の世界をひろげよう〜」に先立って行われた、ひきたよしあきと、齋藤 仁巳 先生(株式会社類設計室 教育事業部 次長/文系講師)、山根 教彦 氏(株式会社類設計室 経営統括部 経営企画課長/人材課長)との鼎談のもようを、5回にわたってお届けします。

今回は第5話(最終話)「イタリアの校長先生の言葉/好きな色を自由に決められることが勉強/みんなが笑って暮らせる国へ」です。

左から、齋藤 仁巳 先生、ひきたよしあき、山根 教彦 氏

【目次】
第1話 入試の先にある言葉の使い方/体験のストックをして、そしてそれを考えた経験があるか
第2話 親は自分の子の良い点を探す力が発揮できているか/エールを贈る
第3話 探求しよう/シンプルに自分が思ったことを素直に書けることがだいじ/社会の中での読解力も身に着けたらもっと楽しくなるよ
第4話 言葉を駆使して生きる力/体と心と頭がつながった言葉/大谷翔平のどこが素晴らしいかということを僕たちは教えていかないといけない
第5話 イタリアの校長先生の言葉/好きな色を自由に決められることが勉強/みんなが笑って暮らせる国へ ←いまココ

■■イタリアの校長先生の言葉/好きな色を自由に決められることが勉強/みんなが笑って暮らせる国へ■■

ひきた 以前イタリアの田舎町に行ったら村の人たちがすごく歓迎してくれて、みんなでワインを飲みながらワイワイとごはんを食べたの。そこにはその村の学校の校長先生も来ていたんだけど、そのときに話してくれた言葉にめちゃくちゃ感動して。なにかと言うと、「イタリア人の教育の目的は愉快に暮らすことだ」と言うんですよ。「生涯を通して愉快でいるために勉強するんだ」と。いい大学に入るとか、出世とか、お金儲けなんかとは別次元の価値観です。

ものすごく腑に落ちて、その校長先生から学んだ「愉快に生きることが教育の基本」というのが僕の中にはすごくあるんですよね。いま自分は愉快かどうかを感じる力、もっと愉快になるにはどうしたらいいかという、いわば愉快力。これがイタリア人の本源追究だと思うんです。

一同 いいですねぇ。

山根 類塾も、「生き抜く力を育てる」と言うんですけど、その先も言葉にできたらいいなと思ってて。「愉快に暮らすため」って思うほうが幸せだなあ。(笑)

ひきた 誰もが思ういい言葉だよね。その校長先生はそれを信念にしていて、子どもたちが愉快に生きるためにはどうしたらいいかという話もしてくれたんですけど、美術に力を入れていて、絵も描かせるし、彫刻もさせる。あと、そこでは小学校6年生になると、自分のラッキーカラーを決めるというんです。みんな水色とかピンクとか決めるんですけど、「私は薄いピンク」とか「私はグレーがかった水色」とか、10人いたら10通りのピンクや水色を選ぶ。

そこには正しいとか、正しくないとか、忖度とかない。みんな1個の、個性を持った色を選ぶんです。僕はそういう、自分の好きな色を自由に決められることが勉強だと思うんですよね。類塾が最終的に向かうのが、愉快に生きて、それぞれの色を決めて、隣の人と違ってもいいんだよということになっていくといいなと思います。

齋藤 いまの話で思い出したのは、国語の話で言うと『銀の匙』の授業で有名な灘高校の橋本武先生。橋本先生が、「ゆとり教育というのは、教養のつめこみをすることによって、生きる上でのゆとりや本当の意味での豊かさというのが生まれる教育」ということをおっしゃっていたんです。橋本先生は『銀の匙』を通じて彫刻からなにから、生徒たちに全部経験させるんですよね。国語教育だけにとどまらない。教科を超えて学ぶということ、体験させるということは、これからの教育にすごく必要なことですね。

ひきた あれは圧倒的に強い。学校というよりは塾、松下村塾みたいなものだよね。さっきの愉快もそうだけど、本源をどこに置くか、どこまで本源追求するかができてくると自分の芯ができる。これから先、どんな商売が流行って、どんなものが廃れていくかわからない時代に、たとえば「お金とは何か」という本源追求ができていないと、「金持ちが偉い」とか「人生勝ち組、負け組」とか、そういうものに惑わされるようになってしまう。そうではなくて、「お金とは自分にとって一体何なのか?」と考えられることがだいじだと思うんです。

齋藤 それはお金の仕組みを学び、そして自分とどう結びついているかということを学ぶということですか?

ひきた そう。お金と仕組みについては、いまは小学校に金融のプロが来て教えたりしているけど、それだけだと「これが儲かるぞ」「今度はこれだぞ」という話になりかねない。そうではなくて、そもそも自分にとってお金とは何だ?というところを学ばないと。仕組みやこれからの流行ばかり憶えてもダメだと思うんです。

僕は小学校のときに、藤原塾という塾に通っていたのですが、そのときに先生が「算数とは物事の順番を決める力をつけることだ」と話されたんです。論理というのは、プライオリティというか、何から順番に解いていくか、じゃないですか。だから物事の順番をつける力が算数だって話してくれたんですね。それって、その先生が考える算数の根源だと思うんです。算数を勉強する意味を、その一言で教えてくれた気がしました。

本来学校では、そういうことを教えることがだいじだと思うんです。『ドラゴン桜』に「英語は度胸だ」という言葉があるんです。英語は何を学んでいるのかというと、あれは度胸を学んでいるのだと。違う国の人と話すときにたくさん言葉を知っているほうが度胸がついてケンカがしやすいんだというようなことが書いてあったんだけど、あれも本源だと思うんです。これから先、本源力のようなものは、なにかにつけて必要になってくるんじゃないかなと思う。

齋藤 学びの本源というものを、どこに据えてあげるのがいちばんいいとお考えですか?

ひきた 僕は「愉快」に近いところがあると思います。「みんなが笑って暮らせる国へ」というのが僕のスローガンなんですが、「人も自分も笑って、どう人を愉快にできるか」というところが学びの本源だと考えています。

山根 類塾の「活力ある社会を作りたい」というのは、たぶん同じ思いです。活力ある子を作りたいし、社会も人もみんなそういうふうにできたらいいなって。本源追求の軸はだいじにしながら、未来に進んでいくということをやっていると思います。

齋藤 大人が軸をどこに据えるのかということと、子どもたちにどのようになってもらうのがいいかということは、やはり指導する人たちがもっと一体にならないと、なかなか大変かなと思いました。

ひきた さっきのイタリアの校長先生はみんなに「愉快か?」「愉快か?」って聞きながら学校を運営しているんです。すごいよね。

――きっとそういう社会だと、愉快じゃないときに愉快じゃないって言えるんですね。

ひきた そうそう。「いま僕は愉快じゃない」って誰かが言うと、みんなが「どうしたの?」「なにがあったの?」という話ができるんだと思う。

面白い話がもう一つあって、フランスワインというのはそれぞれの土地があって、そこの湿度とか土の質とかを計算して、きれいにワインを作っているじゃないですか。そんなフランス人がイタリアに来ると「あそこはヒマワリと一緒にブドウが植えてある、信じられない」って言うんですね。ヒマワリってめちゃくちゃ土地の養分を吸い取っちゃう。そんな横でブドウを育てたっていいブドウは育たないからダメだって言うんだけど、イタリア人は「きれいな景色じゃないか」って。

一同 爆笑。

ひきた 「ここは神様に愛されている土地なんだから美味しいワインができるに決まっているじゃないか」って言うわけ。イタリアとフランス、どっちが正しいのかわからないけど、どっちが好きかはわかるよな、みたいな(笑)。

聞くと、土地がすごく肥沃なのでヒマワリが植わっているくらいじゃ全然影響ないらしいんです。陽射しもたっぷりあるし。それに比べると、フランスの土地はそこまで肥沃ではないから、それはそれで美味しいワインができるんですけど、フランスでワインを作っている人は、たぶん愉快じゃない。

イタリアのブドウ畑。

齋藤 話は変わりますが、子どもたちに自信を持ってもらうために、ふだんから心がけていらっしゃることや大学で講義をするときなどで意識されていることってありますか。

ひきた 若い子はよく、自己否定のようなことをエクスキューズとして言うんです。「自己肯定感」という言葉があるじゃないですか。あれって20世紀になって出てきた言葉なんです。90年代の終わりくらいに世界共通テストのようなものやったら、「自己肯定感が高いか?」という項目の点数が日本は低かったんです。「日本人は自己肯定感が低い」と大騒ぎになって、そうこうするうちに自己肯定感を上げることが教育目標になった。

ちょうどいまの大学生くらいまでが「自己肯定感教育」をされちゃっているんです。だから自己肯定感の高低をすごく気にする。その言葉が一般的になる前は「自信がある、自信がない」という表現をしていたんです。「算数には自信がないけど体育には自信がある」とか。それだと人格否定にはならない。でも、自己肯定感というと全人格になっちゃうじゃないですか。全人格で評価してしまうところに子どもたちを持っていってしまったんです。

齋藤 では、「自己肯定感」という言葉を使わないということですね。

ひきた 使わない。

齋藤 ひきたさんの著書以外で推薦図書とかおすすめの本はありますか?

ひきた 今日の講義で取り上げるんだけど、僕は谷川俊太郎の詩がいいと思う。スヌーピーを翻訳したのが谷川さんで、スヌーピーの中の言葉というのは僕は心の中に響いているんですけど、それが国語的には生きています。言葉を好きになるには谷川さんですね。読んで気持ちのいい日本語を使うんです。言葉のマグネットを育てるような教育ができるのは、僕は谷川さんの詩じゃないかなと思っています。

あと、言葉の源を調べるというのも僕は好きで、これは先生たちにとってもだいじだと思うんですけど、たとえば「雑談」の「雑」。これはいろんな糸を集めて仕立てられた着物のことなんです。長い糸、短い糸、絹糸、木綿糸、麻糸、黄色もあれば黒も緑もある、とにかくなんでもいいから入れて一枚の着物を仕立てる。いろんなものを束ねて作るのが雑だとわかると、雑談というのは、みんなが集まってなんでもいいから好きなことを話せばいいんだということがわかる。そこでは賢い発言をする必要もないし、途中で意見を変えても、ウケを狙わなくてもいい。NGな意見もない。そういうふうに、雑談ひとつとっても、教える側が子どもたちに言葉の源を教えることができると、なるほどそうなのか、ということになる。これも1つの本源追求ですよね。

【特別企画】ひきたよしあき×類塾鼎談「読解力と愉快力 〜みんなが笑って暮らせる国へ〜」第4話「言葉を駆使して生きる力/体と心と頭がつながった言葉/大谷翔平のどこが素晴らしいかということを僕たちは教えていかないといけない」

3月25日に開催された類塾×ひきたよしあき特別講演会「親も子も話すこと、書くこと、自分が好きになる!〜言葉のマグネットで自分の言葉の世界をひろげよう〜」に先立って行われた、ひきたよしあきと、齋藤 仁巳 先生(株式会社類設計室 教育事業部 次長/文系講師)、山根 教彦 氏(株式会社類設計室 経営統括部 経営企画課長/人材課長)との鼎談のもようを、5回にわたってお届けします。

今回は第4話「言葉を駆使して生きる力/体と心と頭がつながった言葉/大谷翔平のどこが素晴らしいかということを僕たちは教えていかないといけない」です。

左から、齋藤 仁巳 先生、ひきたよしあき、山根 教彦 氏

【目次】
第1話 入試の先にある言葉の使い方/体験のストックをして、そしてそれを考えた経験があるか
第2話 親は自分の子の良い点を探す力が発揮できているか/エールを贈る
第3話 探求しよう/シンプルに自分が思ったことを素直に書けることがだいじ/社会の中での読解力も身に着けたらもっと楽しくなるよ
第4話 言葉を駆使して生きる力/体と心と頭がつながった言葉/大谷翔平のどこが素晴らしいかということを僕たちは教えていかないといけない ←いまココ
第5話 イタリアの校長先生の言葉/好きな色を自由に決められることが勉強/みんなが笑って暮らせる国へ

■■言葉を駆使して生きる力/体と心と頭がつながった言葉/大谷翔平のどこが素晴らしいかということを僕たちは教えていかないといけない■■

ひきた 大学生の就活指導をしているとエントリーシートに「座右の銘」を書く欄があって、エリート校の学生たちは僕のところに「商社に行くには『一期一会』で大丈夫ですか?これでは弱いですか?」と質問にくるわけです。「いや、それはおまえの座右の銘だから」って言うんですけど、ネットを見ると「どこどこの会社に向いてる座右の銘」というのが出ている。だから、エリート校の就活生は座右の銘をいくつも持っているんです。

ところが、大阪芸大の子たちに座右の銘を書かせると、「優しいね」って書いてくるわけ。これ座右の銘か?と思うんだけど、一緒に書かれた理由を読むと、「小学生のときにお母さんに優しいねと言われてとても嬉しかった。それからずっと優しいねで暮らしてきたのだけど、中学高校で優しいというのはすごくみんなにマヌケ扱いされて、いじめられてどうしようもなかった。だから、優しくあることなんてやめてグレたんだけど、大学に入ってから人に優しいねと言われたらやっぱり気持ちよかった。だからこれからは何があっても優しいねで行こう」って書いてあるんです。他方、「一期一会とどれがいいですか?」という子どもが僕の目の前に並ぶわけです。

これ、どちらが社会性があるかということだと思うんです。一時的に、いい会社に入るところまではいけるかもしれないけど、その後どちらのほうが言葉を駆使して生きていく力が強いかという話になると、この2つはけっこう差があるような気がするわけですよね。いまの教育は探求するということがないから、言葉を駆使して生きる力を得ることができない。でもそれがないと、類塾さんの言う「生きる力、社会に出てからの強い言葉」というのはなかなか生まれないんじゃないかなと思っているんですよね。

山根 これはよく阿部(株式会社類設計室 代表取締役社長 阿部 紘 氏)も言うんですが、体と心と頭がすっきりとつながった言葉がだいじなんじゃないかと。感じたこと、思ったこと、それがちゃんと言葉になる。

ひきた ネットと頭はつながっているけど、体と心はつながっていないという。

山根 そうなんですよね。そこがしんどくなっちゃう原因かもとも思う。それでどんどん情報量がいっぱいになっちゃって。

齋藤 しかもネットというのはほしい情報にすごく早くリーチできて、そうするとその中だけでずっと言葉を回してしまう。

ひきた そうですね。あと、僕、語彙力ということですごく感じるのは、ネットというのは極めて強い言葉を使いますよね。「完全敗退」とか「捏造」とかすごくきつい言葉で人を引っ張る。いまの子どもたちは、そのきつい言葉が恒常化しているのをずっと見ているわけです。そうすると、最初は気を引くために出てきた極めて強い言葉というものが、普通の言葉として口に出てくるようになる。しかも新型コロナの影響で、これはある中学校の先生が言っていたんですけど、マスクをつけているのでしゃべりづらい、声が聞き取りにくいということで、感情というものがどうしても言葉に強く出る傾向があるらしいんです。

口数は少ないけど強い言葉を使うとなると、感情の機微を言葉で表すことができなくなってくる。自分の心情を表す表現や、情緒的な「あわい」のようなものを表現をすることができなくなってしまうんじゃないかと思うんです。そこはやはり、読書をしている子とネットばかりしている子とでは、ずいぶん差ができてしまうと思います。

齋藤 やはり子どもたちは読書をしたほうがいい?

ひきた したほうがいいと思いますね。ネットがあればなんでも情報を取れると言いますが、そこからこぼれ落ちていく感情の機微みたいなものはネットから得るのは難しい。行間を読むということもなくて、そういうことが極まるとどこかで人生は行き詰る。

いまの若い子は、話の間が怖くてしようがないと言うんですよね。相手が沈黙してしまうと自分がダメに思えてしまうらしい。そりゃTikTokとかの、矢継ぎ早に画像が入れ替わることに慣れていたら、1分間の沈黙がとても長く感じられてしまう。それはもう、考えるだけの時間を持つことができなくなっているんじゃないかと思うんです。

齋藤 僕はいま、そういう文化の中で育った子どもたちの人間関係そのものが、「そんなもんでええわ」って当たり前になってしまったら怖いなと恐れています。やはりネットの世界の言葉だけでは社会に出てからは通用しないものですか?

ひきた 先日のWBCになぜ日本人があんなに熱狂したかというと、僕はたぶん、大谷翔平の使う、きわめて人をリスペクトする言葉や優しい言葉、礼儀正しさというものに対して、忘れていた何かを取り戻すというか、心にしみるものがあったんじゃないかと思うんです。あれ、日本が優勝したこと以上にみんな感動していましたよね。ああいうものに対する憧れというか、なにか大切なものを失っているのではないかという思いがあるんじゃないかな。

だから大人も子どもも熱狂した。ふだん、きつくて強い言葉にさらされて、そんな言葉ばかり使っていることに対して内心はギスギスしたものを感じていて、だからああいうものを見るとすごく心がホッとすると思うんだよね。本来なら僕たち大人が、子どもたちをそういう気持ちにさせてあげないといけないんですよね。

齋藤 そうですね。耳が痛いです。

山根 やっぱり大谷は、言われたからやるんじゃない、体と心と頭がつながっている感じがするから、見ていてすごく気持ちがいいんですよね。

ひきた 世界中の人が彼を、野球選手としてだけではなく人間として称賛しているじゃないですか。そういうものに対して、彼のどこが素晴らしいかということを僕たちは子どもたちに教えていかないといけないと思います。

山根 いまの教育だけではダメだということはみんななんとなく感じていて、次の段階にきている感じはするんですよね。

ひきた 先日専門学校の方の話を聞いたんですが、昔なら、3流の大学でも専門学校よりは上だという感じがあったんだけど、いまは早く手に職をつけて働くほうが良いと考える子どもたちも出てきているんですって。それってやっぱり、なにがなんでも大学に行かないといけないという価値観が変わってきたんじゃないかな。

齋藤 先日NHKで、一人の人がずっと同じ職でありつづけることはできない時代に入ってきた。転職は当たり前になるし、それだけ業界も変わるし、新しいものを生み出さないといけなくなる。だから生涯を通して学びつづけないと生きていけないというような番組をやっていたんです。それを見て、そんな時代になったのかと思うと同時に、それならば、大学は絶対行かなければいけないとか、そういう固定観念を親御さんたちにもいったんはずしてもらって、手に職をつけるとか、そういう方向で考えていくのもありなんじゃないかとも思いました。そう考えられるようになれば、子どもたちの可能性も広がると思うんです。

――数年前のアメリカでの研究ですが、その調査をした年に小学校に入った子どもたちの大半は「いまはない職業」に就くという結果が出たと、内田樹さんがブログかなにかに書かれていて、だからいまの価値観で将来のことまで決める必要はないという趣旨のことをおっしゃっていたんです。これから先、価値観も技術もどんどん変わっていって、ずっと学びつづけないといけなくなるかもしれないときに、学びなおしできるだけの体力というか素地を備えておくことが大切なのかなと思います。

齋藤 それは最近すごく思います。結局それは、先ほど話が出たように、子どものときにどれだけ豊かな経験をするかという話につながるんですよね。そこまで見据えて、受験教育と同時に、本来の学びの楽しさも伝えていきたいです。

第5話 イタリアの校長先生の言葉/好きな色を自由に決められることが勉強/みんなが笑って暮らせる国へへ続く。

【特別企画】ひきたよしあき×類塾鼎談「読解力と愉快力 〜みんなが笑って暮らせる国へ〜」第3話「探求しよう/シンプルに自分が思ったことを素直に書けることがだいじ/社会の中での読解力も身に着けたらもっと楽しくなるよ」

3月25日に開催された類塾×ひきたよしあき特別講演会「親も子も話すこと、書くこと、自分が好きになる!〜言葉のマグネットで自分の言葉の世界をひろげよう〜」に先立って行われた、ひきたよしあきと、齋藤 仁巳 先生(株式会社類設計室 教育事業部 次長/文系講師)、山根 教彦 氏(株式会社類設計室 経営統括部 経営企画課長/人材課長)との鼎談のもようを、5回にわたってお届けします。

今回は第3話「探求しよう/シンプルに自分が思ったことを素直に書けることがだいじ/社会の中での読解力も身に着けたらもっと楽しくなるよ」です。

左から、齋藤 仁巳 先生、ひきたよしあき、山根 教彦 氏

【目次】
第1話 入試の先にある言葉の使い方/体験のストックをして、そしてそれを考えた経験があるか
第2話 親は自分の子の良い点を探す力が発揮できているか/エールを贈る
第3話 探求しよう/シンプルに自分が思ったことを素直に書けることがだいじ/社会の中での読解力も身に着けたらもっと楽しくなるよ ←いまココ
第4話 言葉を駆使して生きる力/体と心と頭がつながった言葉/大谷翔平のどこが素晴らしいかということを僕たちは教えていかないといけない
第5話 イタリアの校長先生の言葉/好きな色を自由に決められることが勉強/みんなが笑って暮らせる国へ

■■探求しよう/シンプルに自分が思ったことを素直に書けることがだいじ/社会の中での読解力も身に着けたらもっと楽しくなるよ■■


ひきた 類塾に「探求」という言葉があるじゃないですか。僕あれキーワードだと思っているんですよね。探求というのはどういうときに使うものなんですか?

齋藤 もともと類塾は「受験の先にある将来に生きる力」というテーマで50年間やらせていただいてきたのですが、時代の変化とともに2016年に「探求講座」という授業が始まりました。受験や教科を超えて、子どもたちが社会のこと、将来のことを探求していくことは言語能力の引き上げにもつながります。

類塾において探求は2つあると思っていて、1つは「先のことを考えてこれからどうするか」ということ、2つ目はそれよりも大切な「先人たちの知恵がどのように蓄積されていまに至ったのか」ということ。自然界の中での人類の歩みから、人類社会というものの事実を自分の価値観にとらわれず、事実のみを見据えてみんなで議論しあう、追求する場を、類塾では探求というふうに位置づけています。

山根 先日、類設計室のほうで『類設計室創立50周年 本源から未来をつくる』という本を出したのですが、たぶん社風として、なに?なぜ?と根本に立ち戻って考える精神が創業以来あって、それを教育の場でもやってきたんだと思います。

『類設計室創立50周年 本源から未来をつくる』

ひきた 僕はこの間授業を受けたときにすごく面白かったのは、何か1つのテーマについて先生が「もうちょっと探求してみようか」と言うと、子どもたちがその言葉に反応して自由に発言しはじめるわけ。ここから先はバラバラの答えでしゃべっていいんだというふうになって、自分の小さかったころの話とか、この間行った旅行の話とか、話がずれていくんです。

そこまでは正解を求める授業だったのが、「探求しよう」と言った瞬間からは、答えなしの世界で発言して構わない、オレの探求はこう、私のはこう、というふうになる。それは自分の過去の経験とかに戻るだけなんだけど、そこからが類塾っぽくなって相当面白い。これちょっと博報堂のクリエイティブワークに近い。あの「探求」という言葉が、不思議なパワーを出しています。あれはたぶん、決められた答えに向かって話を進めるわけじゃないからですよね。

あのときにすごく開く感じがする。あの、探求しようと思ったところで本を読みだすと読めるようになると思うんですよね。正解を見つけようとする読解力はそこまでですけど、探求してみようと思ったときに本を開いたら「あ、これはオレの思っていた答えに近い」というような実感があると思うんです。そこの前で止めてしまうと、僕は読解力が付かないと思います。

類さんが考える探求というのはすごく高尚な考えがあるんだけど、子どもたちにとっては「ここから先は自由」みたいな発言になっていたのは、良い仕組みになっていると感じました。

山根 よく「はい2分追求」とか言うんですよね。そうすると2分間しかないものだから子どもたちは待っていられなくてしゃべりだす。そのとき、反応を返すというのもだいじにしていて、誰かが何か言ったら、「うんうん」とか「んー?」と反応すると、発言している人は話しながら「あ、これちょっと違うかも」と思って考えなおしたりする。そういう場もけっこう大切にしています。

類塾ホームページより。

ひきた 探求の不思議な力。僕は一番感じます。

齋藤 学校のグループワークとは少し違いますし、本当、不思議な力ですね。それによってそのあとの議論の雰囲気が変わったり、よりリアルな気持ちを出すことでむしろそっちのほうが本質というか、正解に近づく気もしますし。

ひきた 僕、高校生のいろんな審査をしているんですけど、たとえばSDGsについて話し合ってくれというと、「これはSDGsの17番に入っているよね」とか「この話題の中には8番と15番と17番が入ってます」というふうに分析が始まるわけです。新聞記事を見た瞬間にSDGsの番号のチップをポンポンポンと置けるくらいの知識がある。

またあるときは新聞が張り出されていて、その下にSDGsの番号チップがあって、その新聞記事はSDGsにおける何の話かとチップを貼っていく。それは新聞記事の読解力を深めるという授業なんですけど、記事内容を読んでいるかというと、僕にはそう思えないんだよね。間違っているとは言わないけど、そこばかり行ってしまうと、それはある一定のところまでは有益に働くけど、それこそ受験の先にある社会に出たときにはほとんど意味がなくなるんじゃないか。本源追求からはずれてしまうかな、と。

それはいまのSDGs教育が入試対策になっていて、ある話題に対してこれはSDGsの何番だって言えるような能力を高めているからだと思うんですよね。で、そういう高校生が書く論文というのは、分析力には長けているのだけど、ジェンダー問題や地球温暖化など、SDGsの本質について語るというところまで行かないんです。それは明らかに追求、探求までできず、分析で終わっているからなのではないかという気がします。

齋藤 そうですね。作文もそういう作文になってしまっていて、でも入試を通るためには、ある程度そういう入試の型をクリアしたほうがいいという面もあるんですけど、やっぱり子どもたちが、自分が書く作文にどこか心が乗っていないので、本当にこれでいいのかというふうにとまどうというところも。やっぱり自信を与えていくということが必要ですね。

さきほどおっしゃっていた、読むとか書くというのはすごくシンプルにやっていかないといけないというのはどういうことですか?

ひきた 読むとか書くをシンプルにするというのは、基本的に「どこにジーンと感じたか」がわかることだと僕は思っているんです。それを、これが正解、これは不正解ってやっていくと、読み方が変わっちゃう気がします。

ある審査で、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』の感想文を読んだんです。あの話、蜘蛛の糸を伝って地獄から天国に行こうとしていたカンダタが、また地獄に落ちちゃうじゃないですか。それに対して「結局、お釈迦様はカンダタを助けなかった」と書いた子がいたんです。カンダタじゃなくてお釈迦様に視点が当たっているわけです。で、あの話は極楽の朝の場面から始まってお昼で終わるんですが、その感想文には「このとき、お釈迦様はどんな気持ちでお昼ごはんを食べたんだろう」と書いてあるんです。

一同 爆笑。

ひきた 芥川龍之介をそういうふうに読むってすごいじゃない。すごい能力なんだけど、これは正解か?という話になると、たとえばそれを入試で解答したら不正解だったりするわけです。でも本当は、そういうふうにシンプルに、自分が思ったことを素直に書けることがだいじだと思うんですよね。

それは博報堂財団に寄せられた感想文だったんです。僕はいろんなところで作文や論文の審査をしていて、たいていのところはしっかりとした審査基準があるんですけど、博報堂財団のはそういうのがないんです。だからその感想文みたいにユニークなものを選ぶことができるんですけど、審査基準があるとそこに合わせて子どもたちは書いてきます。

齋藤 そうですね。ただ、合わせなくていいよというのも違うと思いますし、受験する子もいるわけで、だからそれはそれでクリアさせてあげつつも、やっぱり本当に読解する、社会の中での読解力も身に着けたらもっと楽しくなるよ、ということを子どもたちに感じてもらえればいいなと思っているんです。まずは僕ら自身がそうなっていかないといけないですね。

第4話 言葉を駆使して生きる力/体と心と頭がつながった言葉/大谷翔平のどこが素晴らしいかということを僕たちは教えていかないといけないへ続く。

【特別企画】ひきたよしあき×類塾鼎談「読解力と愉快力 〜みんなが笑って暮らせる国へ〜」第2話「親は自分の子の良い点を探す力が発揮できているか/エールを贈る」

3月25日に開催された類塾×ひきたよしあき特別講演会「親も子も話すこと、書くこと、自分が好きになる!〜言葉のマグネットで自分の言葉の世界をひろげよう〜」に先立って行われた、ひきたよしあきと、齋藤 仁巳 先生(株式会社類設計室 教育事業部 次長/文系講師)、山根 教彦 氏(株式会社類設計室 経営統括部 経営企画課長/人材課長)との鼎談のもようを、5回にわたってお届けします。

今回は第2話「親は自分の子の良い点を探す力が発揮できているか/エールを贈る」です。

左から、齋藤 仁巳 先生、ひきたよしあき、山根 教彦 氏

【目次】
第1話 入試の先にある言葉の使い方/体験のストックをして、そしてそれを考えた経験があるか
第2話 親は自分の子の良い点を探す力が発揮できているか/エールを贈る ←いまココ
第3話 探求しよう/シンプルに自分が思ったことを書けることがだいじ/社会の中での読解力も身に着けたらもっと楽しくなるよ
第4話 言葉を駆使して生きる力/体と心と頭がつながった言葉/大谷翔平のどこが素晴らしいかということを僕たちは教えていかないといけない
第5話 イタリアの校長先生の言葉/好きな色を自由に決められることが勉強/みんなが笑って暮らせる国へ

■■親は自分の子の良い点を探す力が発揮できているか/エールを贈る■■

――読解力をつけるにはさまざまな体験、それは自分にとってつらくてイヤなことも含めてする必要や、自分と異なる価値観の人とも交流を持つことが必要だと。いっぽうで、傷つかない、傷つけないということに子どもたちは腐心しているという現実もある中で、どうすればいいのでしょうか。

山根 親御さんはどういう意識の方が多いと感じますか?自分の子どもに失敗をさせないようにしたがる親御さんがいらっしゃるのはよく聞きますが、最近ある先生から「そろそろちゃんと失敗をさせないといけないと思っていて、どう失敗させましょうか」という相談を受けたとも聞いたんです。その親御さんは、受験で失敗したときのことを心配していらっしゃるらしいのですが、それもなんか違うんじゃないかと。結局、親側から何か作り与えるということではないのではないかなぁと、僕はそのとき思ったんですけど、そういうのを現場で感じることってありますか?

斎藤 めちゃくちゃ感じます。でもいまはやっぱり、基本的に子どもの失敗は自分の失敗になってしまうので、親御さんは子どもに失敗させないようにという意識は強いですね。

山根 子どもの失敗が親の失敗になる?

ひきた 子育てに失敗したってすぐ言うもんね。

――それって子育てをワンオペでやっているという意識があるからですかね。昔みたいにおじいちゃんおばあちゃんがいて、近所の人とも交流があって、どこかのおせっかいなおじさんやおばさんがいて、隠居のおじいさんが子どもを叱ったりほめたり、親にアドバイスをくれたりというような大きなコミュニティで子育てができたら、自分の失敗とは思わないんじゃないでしょうか。

齋藤 いまでも地方の、学校を中心として地域の人たちがみんなで子育てをしているところは学力も高いんです。みんなで一体になって子どもたちに生きる場を与えて、生きる力をつけていこうということができているけど、都会ではなかなかそれができない。しかも、先ほどおっしゃったように子どもたちは、仲間関係、友達関係というものが窮屈というか、楽しくなさそうなんです。でも、それが普通になっているから、楽しくないとも言わないんです。

ひきた 千代田区の小学校の先生から聞いた話では、イジメっていま小学校2年生くらいが多いらしいんです。でもそれは子どもたちが自発的にいじめているわけではなくて、保護者がLINEとかで「あのお母さんどう思う?」と仲間はずれにするって言うんですね。それを見た子どもは、お母さんがやっているから良かれと思って、仲間はずれにされたお母さんの子どもを仲間はずれにする。これは極端な例かもしれないけども、やっぱり親のそういう態度はすごく子どもに影響する。学年が上がればそういうことではないということが子どもにもわかるんだけど、低学年にとって親は絶対だから。

で、そういう経験を低学年でしちゃうと、「絶対に仲間はずれにされないようにするには」と自分の中で切り詰めていってしまうんですね。そうすると、萎縮した、本音を語れないという世界になってきますから、そこでの受験勉強というのは本当に情報処理になっていってしまう。

そうなってくると本来の受験とも、本来の勉強ともぜんぜん違うものになっていってしまうし、そういう環境の中で、子どもから本音を引き出すとか、子どもの言語能力を高めていくというのは相当難しい。親が、自分の子育ては失敗だと思ったら、その子どもはのびのびと本音を言うような気持ちにはなれないと思います。

齋藤 ひきたさんの講座は、親が受けてもらったほうがいいですね。

ひきた 僕は『親塾』という本を書いているんですけど、もしかすると僕の子ども向けの本の中ではいちばん売れているんじゃないかな。だけど、それくらい親というのは子どもにとって大きな存在なんですね。

僕のところにあるお母さんが「うちの子、こんな作文しか書けないんです」と言って作文を持ってきたんです。「しっちゃかめっちゃかで何が書いてあるかわからないし、学校の先生からも作文力がないと言われた」と。でも、読んでみるとカギカッコの中におじいさんの言葉やおばあさんの言葉が入っていてめちゃくちゃ伝わってくる。つまりその子は声を聞き分けて書くことができるんです。ということは会話文がめちゃくちゃうまいわけ。会話文がうまいということは人の話を聞く能力があるということじゃないですか。文章全体の構成は確かに悪いんだけど、その子は書き分ける能力がものすごくある。「お母さん、そういうところまで見てますか?」と言うと「こんなのそんなにうまいんですか?」という話になってしまう。

親というのは、自分の子どもに対してすごく厳しい目で見るんだけど、その中からその子の良い点を探すということに対して、力が発揮できていないんじゃないかと思う。欠点を見つける2倍3倍の力を使って長所を探さないと、自分の子どもの長所って見つけられないんですよね。だから、そのあたりの親の力というものもすごくだいじなんです。

齋藤 親も子どもも、とにかく周りの目が気になって本心を出せないというベールがあるのですが、今日の講演では子どもたちに、周りの人を傷つけず、自分も白い目を向けられることがない、自信がつく本心の出し方を伝授していただけるとうれしいです。

ひきた これは今日話そうと思っているのですが、僕がいた博報堂という企業はアイデアを出さないといけない会社なんです。営業の人もバイトの人も、役職が上の人も入社したばかりの人もみんなアイデアを出さなければいけない。それってやっぱり勇気がいるし、恥ずかしいんだけど、あの会社が優れているなと思うのはアイデアを出してくれた人には必ず拍手をするわけ。出されたアイデアはつまらないかもしれないけど、その勇気にはいつもエールを贈るというのが会社の伝統だったんですよね。

僕は独立してからいろんな会社に行ってみて、この伝統のないことの窮屈さ、つらさを感じるわけです。だから僕の講義では、大阪芸大でも明治大学でも、発表した人には拍手を贈るということをやっています。そうすると、拍手を浴びたくて発表したり、この場には批判的な人がいないとわかった瞬間に自由に発表するようになることがある。まずは心理的安全性を保つ意味でみんなでエールを贈ること、その上で発表内容の個性や長所を見つけるようにしていくと、だんだんと自信がついていくと思います。

「このアイデアつまらないよ」なんて言われたら次から出せなくなるじゃないですか。100のつまらないアイデアの中に1個いいものが見つかるかもしれないのに、そう言われたら人格否定されたような気持ちになって、怖くてもう何も出せなくなっちゃう。

加えて、ヒエラルキーのある会社だと、決済権のある人の好みのものを探してしまってうまくいかなくなる。いまはなんだか社会全体がそういうふうになっているような気がするんですよね。先生に好かれるもの、クラスでバカにされないものを出すことに力が注がれていて、それはすごく間違っていると思います。

山根 類塾でときどきアンケートを取るんですが、その中に「なんのために勉強をしていますか?」という設問があって、昔は「志があってこういうことがしたい」という回答が多かったのが、最近は「親が喜ぶから」と「周りがやっているから」という回答が2トップなんです。そこに合わせるような勉強になっていってる。

ひきた 子どもは親にカスタマイズしていくからね。

山根 先ほどの話の続きで、自分は自信を持っていいんだということを引き出すことは、すごく必要だと感じています。ひきたさんからよく、博報堂時代のエピソードとしてキャッチコピーを100個書いて持っていくとか、そのために本屋を何軒も回ったという話を聞くと、それくらい自信を持っていろんなことに臨めるようになれたらいいと思います。

ひきた キャッチコピーを100個出せるのも、出したあとにエールを贈ってくれる人がいるからできるのであって、たとえそのコピーが駄作だったとしても、作ったものに対するリスペクトがあったからだよね。

第3話 探求しよう/シンプルに自分が思ったことを書けることがだいじ/社会の中での読解力も身に着けたらもっと楽しくなるよへ続く。

【特別企画】ひきたよしあき×類塾鼎談「読解力と愉快力 〜みんなが笑って暮らせる国へ〜」第1話「入試の先にある言葉の使い方/体験のストックをして、そしてそれを考えた経験があるか」

3月25日に開催された類塾×ひきたよしあき特別講演会「親も子も話すこと、書くこと、自分が好きになる!〜言葉のマグネットで自分の言葉の世界をひろげよう〜」に先立って行われた、ひきたよしあきと、齋藤 仁巳 先生(株式会社類設計室 教育事業部 次長/文系講師)、山根 教彦 氏(株式会社類設計室 経営統括部 経営企画課長/人材課長)との鼎談のもようを、5回にわたってお届けします。

言葉、教育、次世代育成…多くの共通点を持つひきたよしあきと類設計室の教育事業(類塾)。物事の本質や根源、すなわち「本源」にまでさかのぼって課題を追求することを大切にしている両者の考える教育、勉強、読解力とは? ほかでは聞けない貴重なお話がたくさん出ました。

左から、齋藤 仁巳 先生、ひきたよしあき、山根 教彦 氏

【目次】
第1話 入試の先にある言葉の使い方/体験のストックをして、そしてそれを考えた経験があるか ←いまココ
第2話 親は自分の子の良い点を探す力が発揮できているか/エールを贈る
第3話 探求しよう/シンプルに自分が思ったことを書けることがだいじ/社会の中での読解力も身に着けたらもっと楽しくなるよ
第4話 言葉を駆使して生きる力/体と心と頭がつながった言葉/大谷翔平のどこが素晴らしいかということを僕たちは教えていかないといけない
第5話 イタリアの校長先生の言葉/好きな色を自由に決められることが勉強/みんなが笑って暮らせる国へ

■■入試の先にある言葉の使い方/体験のストックをして、そしてそれを考えた経験があるか■■

――今回の講演は準備に半年間かけられたと聞きましたが、どのようなところから企画が始まったのですか?

ひきたよしあき(以下、ひきた) 僕は以前から類設計室さんのお仕事をお手伝いしていたんだけど、類塾のパンフレットやホームページをリニューアルしようという話が出た。ちょうどそのとき、類塾をこれからどういうふうにしていくかという変わり目だったんです。それで僕が「朝日小学生新聞」や博報堂財団などで子どもと関わる仕事をしているので、そんなノウハウを話しているうちに山根さんから「一度子どもたちに向けて講演をしてくれませんか?」と言われたのが始まりですよね。

山根 教彦 (以下、山根) 私はもともと東京の類設計室にいたのですけど、そのころから設計プロジェクトのコンセプトメイキングやコピーの打ち出し方などを、ひきたさんに相談させていただいていました。その後、大阪勤務になって広報の役割も担うことになったので、今度は類設計室という会社のブランディングを考えるにあたり、引き続きひきたさんにいろいろ相談させていただくことになったんです。そのときに、弊社のこの類ビル(大阪)の3階にある「類学舎」という半業半学の全日制スクールをひきたさんに見学していただきました。

ひきた 実際に授業に入って、子どもたちに混じって彼らの討論とか聞いたんです。めちゃくちゃ面白かった。

山根 ひきたさんが子どもたちの中に入っていってかけていただく言葉に、子どもたちの反応がとても良かった。それで、講演のご相談をしたらご快諾いただけて。そのときに聞いた話をみんなにもしてもらえたら、ウチにとっても刺激になるんじゃないかな、という思いもありました。

――そのときは何年生の授業を見学されたんですか?

山根 類学舎は小学生から高校生までいるんですが、そのとき入っていただいたのは中学生の混合クラス。中学1年生から3年生までが一緒になって、ある一つのテーマについて議論するという授業だったと思います。

――齋藤先生は国語の先生ですが、何年生を教えているんですか?

齋藤 仁巳 (以下、齋藤) 基本的には5歳から中学校3年生までなんですけど、一時は高校3年生まで見ていました。

ひきた 18歳?5歳から?

齋藤 はい。そういう時期もありました。いまは中学生までです。

――それでも5歳から15歳まで。10歳差は難しくないですか?

齋藤 いや、基本的には変わりません。使う言葉は変わってきますが。私は今日ひきたさんから学びたいことがあって、なにかというと、子どもの、心から出てくる言葉はやっぱりいちばん面白いんですが、言葉というのは当然ながら言葉という形になってしまう。それをどういう形にしていくかとか、ときには形にしないほうがいいこともある。そのあたりを、プロであるひきたさんに、子どもたちから出る言葉をどういう位置づけで、社会との距離感をどう取るかすごく学びたいんです。

――真面目ですね。

齋藤 真面目ですか?

山根 最初に真面目が出ちゃうタイプ(笑)。

齋藤 最初に真面目が出るって、なんですかそれ(笑)。

ひきた (笑)最近、心の内面をあまり言わないで、表の言葉のようなもので話そうとする子が多くなってきていませんか?

齋藤 そうですね。出し方がわからないのか。以前もひきたさんに相談させていただいたんですが、まねる対象が少なくなってきてしまっているのかとか、ご家庭での会話も含めて、そういうふうに気持ちを交わす機会が減っているのかなとかいろいろ考えますね。

ひきた なんか表面的な、「誰も傷つけないけど自分の内心でもない」みたいな言葉でうまくやっちゃう子どもが多くなったような気がしますよね。傷つけないように、傷つかないようにっていう言葉づかいがものすごくうまくなってきていて、そのぶん本音とかが書けなくなっている子どもが多くなってきている。

だから作文なんかも早くうまく書くんですけど、深みがない。昔みたいにめちゃくちゃヘタな子はいないんですよ。僕が授業をしたあとに感想とかを書いてもらうと、そこには批判的な感想はなくて、みんな好意的なことを書いてくる。初めのうちは「あ、オレめちゃくちゃ講義ウケたな」とか思うんだけど、どこに行ってもだいたい同じような内容になってくると、「あ、こういう書き方を学校の先生から学んでいるんだな」と思うよね。

――齋藤先生は国語を教えていらっしゃる中で、そのような状況についてどうお考えですか?

齋藤 それはそれとして否定をしてもしようがないので、自分の授業ではまずは感情をそのまま出すことや、自然体で感じたことをそのまま、どんな言葉ででもいいから出すということを取り入れていて、そうして話し言葉で気持ちを喚起した上で書き言葉にするということをしています。そういう過程を取ると「こんなふうに書いてもいいんだ」「ストレートに出してもいいんだ」と子どもたちが感じるみたいです。本音、本音とよく聞くけど、「こう書くものや」と頭の中で決めつけてしまっていたら、本音を出していいと思ってもらえるようになるまでが難しい。

ひきた 国語の教育が一時期、三択の中から選ぶというのがあったじゃないですか。「そのときの主人公の気持ちを3つの中から選べ」みたいな。我々は作る側だから正解と、2つの不正解の答えを作るんだけど、そういう教育をしていくと子どもたちは答えは1つだと思うようになるんですね。そして、先生は答えを持っているものと考えるんです。そうすると、その答えを聞きたがるんだけど、本当はそんなことはなくていくらでも解釈があっていいわけです。だけど、1つの問題に対しては答えが1個あるという教育がされている。類塾さんがやっているみたいな、本音を出すとか言いたいことを言うというのは、あんまりやらない。それはどうやって教えているんですか?

齋藤 たとえば入試問題だとピンキリある。やはり優れた学校や問題作成者は、本質的な答えがだいたいしぼることができるところまで選択肢を用意していたり、出題がされているので、入試対策の国語もおのずと伝える内容が変わってきます。

おっしゃるように選択肢の答えって100点満点ではなくて、20点、40点、60点の選択肢があったら60点を選ぶんだよという話だし、20点でもまったくの間違いではないということ、それから、入試のもっと先にある、社会に出たときに正解のない人や現象に応じて、相手も喜ぶ、満足できる言葉の使い方ができるようになろうというのは、いちばん伝えています。

ひきた そこだいじですよね。いわゆる入試の答えや正解を出すのではなく、臨機応変に社会の中で相手のことを考えた言葉を出していく、そして自分の本音を出していくという、これはいまの教育では難しいというのが、正直なところなんじゃないかなと思います。

僕は自分の本が入試問題に使われることがあるのだけど、その入試問題を僕は解けない(笑)。なぜこれはこんなに難しいんだろうと思うと、全然違うところから引っ張ってきてその解を見出してきている。作者自身はそんなことは思ってない、というのがあったりしてね。だからあれはもう、ある種のゲームになっているところがある気がするんですよね。僕からするとそのゲームの勉強をしたところで読解力がつくとは思えない。それを超えた教育というものを考えていくと、読むとか書くというのはすごくシンプルにやっていかないといけないんじゃないかなと思うんですけど、そのへんはどうですか?

齋藤 どうすれば読解力はつくのかというのは永遠のテーマです。自分の子どもに対して、物事を理解する力や、文章を読んで頭に入れる力がないんじゃないかと不安に思っている保護者は多い。子どもたちも、自分は文字が嫌いだから読解力がないと思い込んでいる。その読解力をつけていくうえで、講師は何がいちばん重要なのか、どんな姿勢を子どもたちに見せるのがだいじなのかというところもお伺いしたいです。

ひきた 読解力というのは、本を読んでその内容を理解する、ということだけではないと思うんですね。実世界での経験と本の中で出会ったときに「ああ、自分とおんなじだ」って思う、ここまでいって読解力だと思うの。体験と読書がくっついている。日常生活での経験が乏しくて、その中で主人公なりの体験を読み込もうと思っても無理だと思うんだよね。

たとえば、農作業の苦しさを知っている人と知らない人が同じ本を読んだとして、その中で農作業の重労働のつらさの描写が出てきたときに理解度が違う。それは本の読み方が全然違うから。だから、日常の中でどれだけ体験のストックをして、そしてそれを考えた経験があるかということと読書は結び付いていると思うんですよね。

(解剖学者の)養老孟司さんが昔、農業体験を子どものころにさせろと言っていたんですけど、それは、たとえば田植えをするじゃないですか。すると田んぼに入ると、土の柔らかさ、水の冷たさ、不安定な感じというのがありますよね。あの瞬間に、脳は生きようとしてやたらに働くらしいんです。あぜ道を歩けば、砂利がぶつかったり砂利に足が取られたりしますよね。そうすると、そこでもまた脳は一生懸命働く。子どものころにそういう経験をすることが、脳にとってはものすごくだいじなんですね。そういう経験がなく、空調の効いた平坦な道を歩くというのは、生きようとする進歩がないわけです。そういう中で読書をしても、脳は発達しないと言うんです。だから、子どものころにいろんな体験を覚えさせることは読解力に必要不可欠だと思うんですが、これって類塾さんの教育にけっこう近いんじゃないかなと僕は思っています。

山根 ちょうどわれわれも4月に「自然学舎」という事業を立ち上げて、茨木市と箕面市の丘陵にまたがる彩都という場所にに弊社が持つ山林があるのですが、そこに江戸時代から残っている棚田があるのでそこで農作業と、あと山での体験を子どもたちにしてもらっています。一回きりの体験ではなく、継続的に、何度も何度もそこで試行錯誤して、葛藤や挑戦をしてもらっています。

この間も中2の子が悲しそうにしていたのですが、聞くと、自分が作っていた作物が鹿に食べられたと言う。だから獣柵というのは必要なのだということを学習して柵を作ったんですよね。そういうリアルな体験というのは、収穫イベントなどでは学べないことを学べるのだろうなあと。こういう活動をこの4月から拡大させて、類塾の学びとつなげながらやりたいと思っています。

自然学舎ホームページより。

ひきた そこはすごくだいじだなと思っていて、たとえば田植え体験やりました、稲刈り体験やりましたというのが、イベントとしてやるだけだと「ああ、楽しかった」で終わるけど、本当は途中の草むしりが大変だったりするわけじゃないですか。でもその草むしりは、いままでの教育ではなかったりするわけですよね。そういう不完全な体験で読書をしたところで、情報処理はできるけど読解力にはなっていかないんじゃないかという気がするんです。

齋藤 さきほどおっしゃられた「不安定なものに触れた瞬間に脳が反応する」ということがだいじなんだと思うんです。私は不安定な状態になるって悪いことではないと思うんですけど、いまの子たちって身体的にも心的にも不安定な状態になることは悪いことだと考える傾向がある。

山根 異学年で教育しているのも、同世代だけだと多少の差が不安につながったりするんですけど、いろんな学年がいると「あ、先輩にはこういう人もいるし、こういう人もいる」というような学びもあると思ってて。これってよくひきたさんがおっしゃる「心理的安全性」がある状態だと思うんですけど、そういう心理的安全性の中で自分を出していいんだという感覚と、さまざまな場所での豊かな体験、そして最後に言葉を学ぶ、それがちゃんとつながると言語能力というのはすごく伸びていくのかなと思います。

第2話 親は自分の子の良い点を探す力が発揮できているか/エールを贈るへ続く。

親鸞聖人ご誕生850年・立教開宗800年慶讃法要に行ってきました。

4月13日(木)、京都の浄土真宗西本願寺よりお誘いを受け、「親鸞聖人ご誕生850年・立教開宗800年慶讃法要」に行ってきました。
浄土真宗本願寺派とは2021年に「伝わる伝道プロジェクト」に参加して以来、研修講師や広報のお手伝いをさせて頂いています。

日本の歴史上、もっとも人の心を揺さぶる説法を行ってきた伝統仏教が、その伝統をだいじに守りながらも、新しい伝道の方法を模索して、親鸞聖人の説かれた教えを広めようとしている。ひきたよしあきはその姿勢に深く感銘し、できる限りの力を注ぎたいと考えています。
当日は、式典開始よりかなり早く「お西さん」を訪れました。
桜の季節を終えたばかりの京都。初夏のような日ざしに輝く阿弥陀堂と御影堂。そこで開場準備を進める方々の笑顔を見ていると、実にのびやかな気持ちになります。

受付が始まり中に案内されると、長い廊下に面した庭に国宝の「南能舞台」が見えました。長い歴史の中で、多くの人がここでお能を楽しんだ。そう思うと、850年という歴史の重みが胸に迫ります。
案内されたお部屋も古式ゆかしく、ほの暗い中に長い時を刻んだ床の間がありました。ここに通されたのがたった6人と知り、緊張がピークに達します。
その後、本堂の左側から阿弥陀像を臨む場所に案内され、たくさんのお坊さんが並ぶ後ろに座りました。
さて、お念仏です。
親鸞聖人生誕850年の催しに唱えられたのは、伝統的な「領解文」ではなく今の時代に合わせ、どんな人にもわかりやすく法義を理解してもらうために作られた現代文の「領解文」でした。

生かされていることに 感謝して
むさぼり 怒りに流されず
穏やかな顔と優しい言葉
喜びも悲しみも分かち合い
日々精一杯つとめます。

まるで、ひきたよしあきがSmileWordsで活動したいと思っていることが、そのまま言葉になったようです。深く感銘し、声に出して唱えます。

「身勝手なことだけど、まるで親鸞聖人が、書き、語り、広めようとしていることを後押ししてくれているかのように感じる」と語るひきたよしあき。
日本中に、穏やかな顔と優しい言葉があふれますよう、これからもがんばります。
外に出ると、まるで根っこを天に広げたような形から「逆さ銀杏」とも呼ばれている大銀杏が新緑に輝いていました。
何もかもが美しい時間になりました。

類塾で講演をしました。「親も子も話すこと、書くこと、自分が好きになる!〜言葉のマグネットで自分の言葉の世界をひろげよう〜」(後編)

第1部の講義に続いて第2部はワークショップです。

第2部では、2つのワークショップを子どもたちにしてもらいました。

1つめは「議論に負けないコツ」。対立する意見が出たときに、それを言い争いでもどちらかが我慢するような安易な妥協でも多数決でもなく、どのように解決するかをドイツの哲学者ヘーゲルの「弁証法」を用いて、自身のフランスでの経験から紐解きます。

ひきたよしあきがフランスに住む友人宅へお邪魔したときのこと。せっかく来てくれたのだからと友人はベルサイユ宮殿に行くことを提案しました。しかし、彼の妻は混雑や自分の体調の悪さなどから反対します。言い争いになりかけたそのとき、その家の小学校4年生の娘さんが1枚の紙を持ってきて線を引きました。
彼女はここでヘーゲルの弁証法を実践します。フランスでは小学校3年生くらいからこの哲学を勉強して、議論の仕方というものを学ぶのだそうです。ある意見があれば必ず反対意見がある。そのとき、感情的になってケンカをしたり「相手は自分のことを否定している」などと考えたりせずに、両方の意見の良いところを取って対立点を回避し、より高次の解答を導き出すということを学び、生活の中でも実践しているのです。このときは最終的には、日本人があまり行かないお城に行こうという結論が導き出されました。

「ここでみなさんにやってほしいことがあります。同じテーブルに座っているチームで、いまから出す設問に反対意見と賛成意見を考えてほしい。設問は、バスに乗ったとき子どもはお年寄りに席を譲るべきか?です。これは以前、新聞投稿をきっかけに議論になったことがある本当にあった出来事で、ある子どもがお年寄りに席を譲ろうとしたら『おまえはわしを年寄り扱いするのか』と怒られて、その子は怖くなって席を譲ることができなくなった。しかし次にバスに乗ったとき、『最近の子は席も譲らないのね』と言われたそうです。さて、ではチームで譲るべきか譲らないべきか、ではどうするのが良いかというのを話し合ってください。はい、スタート!」

発表の時間です。

最初に指名したチームからは「お年寄りは足腰が弱いから譲ったほうがいい」「見た目で判断するのはどうかと思うので譲らないほうがいい」など、もっともな意見が出てきます。なかには「お年寄りはこの先短いけど、子どもは未来があるから休んだほうがいい」というユニークな意見も。

「素晴らしい!最後の意見はグサリときました。拍手!では次のチームお願いします」

「僕は賛成も反対もどっちもなくて、譲ること、譲らないことを考えるんじゃなくて、見た目とかで判断しないでまずは会話をして、会話が弾んでから判断したり、あとは時間帯とかを考えたりしたほうが良いと思う」

この解答には、ひきたよしあきも驚いた様子。

「素晴らしい!拍手!なにが素晴らしいか?彼は躊躇していたけど立ち上がった。まずはその勇気に拍手してほしいのと、彼のこの紙、反対意見も賛成意見も一つも書いていない」
「それでも彼は一生懸命話してくれた。なぜか? 彼は反対/賛成、譲る/譲らないの問題じゃないと考えた。そもそもそういうことではなくて、会話をすべきなんじゃないか。そして、状況や時間帯、つまり観察をして、会話をして総合的に判断することのほうがだいじなんじゃないか、という結論に達した。こういう意見が出てくることがだいじなの。彼は、僕が出した課題を超えた。意見、反対意見ではなくそれ以前に会話がだいじだという。素晴らしい意見です。もう一度拍手!さて、こちらのチームは?」
「自分は譲る譲らないどっちもあると思っていて、もし譲るとしたら、お年寄りのほうが疲れていたり、杖を持っていたり、ケガをしていたり、障害のマークつけていたりしたら譲る。もし譲らないとしたら、子どもがケガをしていたり、そもそも周りの席があいていることもあるだろうし、お年寄りが元気そうやったりしてたら譲らない」

「彼も意見、反対意見ではなく、もっとだいじなことがあるんじゃないかということです。そう、いまの僕が出した課題は“バスに乗ったとき子どもはお年寄りに席を譲るべきかどうか”。反対の人?賛成の人?で多数決を取ったら、『はい、譲ったほうが、もしくは譲らないほうがいいですよね』となって議論にならない。

ところがいまみんなで話し合ってみた結果なにが出てきたかというと、いやちょっと待てよと。ひきたさん、それ課題自体が間違ってますよと。譲る譲らないの話ではなく、それ以前に対話とか観察とかそういうことがだいじなんじゃないか、という意見が出てきた。

実に類塾らしい。この課題に対してよく観察する、相手の状況をよく見るということが、年寄りとか子どもという決めつけ以上にだいじだという結論を出してくれた。これがヘーゲルの弁証法。みんなが大好きな本源追求なんですね。根本から考えてみたら、この課題設定そのものが甘いんじゃないかと、いかにもこの塾らしい答えが出てきた。本当に素晴らしい!みなさんもう一度拍手!」

興奮冷めやらず、ひきたよしあきの話は続きます。
「これからの勉強というのは一つの答えじゃない。こういうふうに、僕の課題設定に対して課題そのものが間違っているんじゃないかと疑うことがだいじなんだよね。子ども、お年寄りといったっていろんな人がいる。子どもだって病気の人がいるじゃないか、マークを付けている人がいたらそのマークを見る、会話をする、そういうことに思いがいたるということが、これからの勉強なんです。

これからは試験も記述式の問題が増えていく。そのときに、自分の意見が出せるようになるにはどういう勉強が必要か? しかもこれは入試だけの問題ではなく、これから先、みんなが勉強していく中には答えが一つじゃないものが増えていく。そのときにはこのヘーゲルの弁証法を思い出してほしい」。

2つめのワークショップは「語彙を増やすコツ」です。この講演のサブタイトルにも入っている「言葉のマグネット」を手に入れる方法を、谷川俊太郎さんの詩をモチーフに学びます。
「谷川俊太郎さんの『生きる』という詩があります。これは谷川俊太郎さんが『生きる』という言葉を真ん中において、自分が生きるということに対しての言葉からできている詩です。『生きる』という言葉のマグネットに集まってきた言葉。実はこれが語彙を作るということです。ある一つの言葉のマグネットに集まる言葉。それは人それぞれ違うはずで、それぞれの語彙ができていく。この語彙を持っていると、本を読んだり人の話を聞いときに言葉がカラダに入ってくる。さあここで、みんなの、いまこの瞬間に感じる『生きる』を書いてみてほしい。はい、スタート!」

発表です。

笑えること、空気が吸えること、お腹がすくこと、当たり前のことができること、感謝できること、どこかへ行けること、新しいことができること、チャレンジすることができること、聞こえること、匂うこと、呼吸をすること、臓器が働くこと、心臓が動くこと、勉強があること、テストがあること、つらいこと、存在していること、楽しいこと、喉が渇くこと、眠くなること、風邪をひくこと、死んでないこと、鼻がかゆくなること…。

これでもかと「生きる」という言葉のマグネットに吸い寄せられた、それぞれの言葉が出てきます。そのどれもが素晴らしく、オリジナリティに溢れています。ほかの人とぜんぜん違う地図の上を生きている、みんなの「生きる」。これが言葉の力というものなのだと、ひきたよしあきは話します。

「ここにいるみなさんはそれぞれ、谷川俊太郎に負けないくらいの『生きる』という詩を書いてくれた。これから先もぜひこれを続けてほしい。今日は『生きる』という言葉をマグネットに据えたけど、これが『学ぶ』でも『愛する』でもなんでもいい。学ぶとは自分にとってどういうことなのかということをたくさん書いて、考えてほしい。そうするとあなたなりの学ぶという語彙、言葉のマグネットができる。

そうやって言葉のマグネットを強くしていって自分なりの語彙がたくさんできたとき、作文力は上がる。どんな言葉に対しても、自分の単語を持っているからほかの人に書けない文章が書けるようになる。そしてそのマグネットに引き寄せられた言葉たちは、みんなの哲学になっていく。

僕はこの類塾という塾が大好きで、今日は東京から来てこうして講演をしているのだけど、なぜ好きかと言うと、それはただ表面的な勉強をしている塾じゃないから。今日みたいに、ものの根源はなにか、言葉の根源はなにかということを追求しているから。だから強くなれる。大学に入ってなにを学ぼうと、みんなは根源を考えることができる。それはいま追求能力をここで培っているからだ。そういう気持ちで勉強していってほしい。追求していってほしい」
類塾の先生たちも身じろぎもせずに聞き入っています。

「最後に」と言葉を続けます。

君たちは必ず失敗する。これは、私が学んだ早稲田大学を作った大隈重信さんが入学式で言った言葉です」。
「君たちは必ず失敗する。だけどそれを気にするな。落胆するな。どんどん失敗をしろ。早稲田大学は失敗する大学である、そんな話をしたそうです。私は入学してすぐ、ここではたくさん失敗しろ、たくさん失敗して恥ずかしい思いもここでして行けと言われた。その4年間がいまの僕を作ってくれたと思う。

この類塾は一体なにかと言うと、失敗するところなんです。ここではいい成績を取るよりも、間違いノートをたくさん作ることのほうがだいじです。そして、ここにいる限りにおいては、みんなは人から称賛され、エールや拍手をもらえるということをたくさん味わってほしい。そうすることによって、芽生えはじめた自我を鍛えてほしい。

それから、ここにいる間に言葉というものをどんどん追求して、自分の言葉のマグネットにどういうボキャブラリーが集まるかということを経験してほしい。それがどんどん大きくなって、類塾を卒業してからもそれがどんどん増えていったときに、みんなは人の言葉でなく、自分の言葉で語ることができるようになる。どこかから借りてきた言葉ではなく、自分の言葉で自分の本音を語れるようになるのは、言葉のマグネットに自分のボキャブラリーがたくさん集まっているからこそできる。本心のところに言葉がなければ、本心なんて言えない。

そして本心をぶつけると、必ず反対意見が出るだろう。その反対意見に対しては自分への人格否定などとは思わず、その意見を取り入れて、もう一つ高い次元の意見を目指すということをやっていってほしい。

類塾ではそういうことが学べる、教えている。そこがやっぱり僕はほかの塾とはぜんぜん違うと思っている。ぜひみんなも、そういうことをどんどん学んで、ただ成績を上げるのではなくもっと強い学力、もっと強い教養というものを身につけていってほしいと思います」。

実はこの日、『トイレでハッピーになる366の言葉』(通称:トイハピ)の編集者、白田久美さんが本をたくさん用意して、東京から来てくださっていました。
『トイハピ』を購入してくださった方には、サインと記念撮影、ひきたよしあきの会社SmileWordsのステッカーをプレゼントとあって、長い列が。

子どもたちに教えるのが楽しくて仕方がないというひきたよしあき。
類塾で第2回目の講演をする日も、そう遠くないかもしれません。

また会える日を楽しみにしています!
待っててね!

【特別企画】ひきたよしあき×類塾鼎談「読解力と愉快力 〜みんなが笑って暮らせる国へ〜」も併せてご覧ください。

類塾で講演をしました。「親も子も話すこと、書くこと、自分が好きになる!〜言葉のマグネットで自分の言葉の世界をひろげよう〜」(前編)

春休みが始まったばかりの3月25日(土)、大阪メトロ西中島南方駅近くの類塾(るいじゅく)本部で講演を行いました。西中島南方は新大阪駅から地下鉄でひと駅、歩いて10分ちょっとの場所にあります。
類塾は、「未来に生きる力を育てる教育」に主眼をおいた塾で、「学習指導」に加え、正解のない課題に向き合い追求心を磨く「探求講座」、好奇心やチャレンジする力を引き出す「本格的な自然・職業体験」といった、いわゆる成績順に席順が決まるような学習塾とは一線を画したユニークな教育に定評があります。
今回は、そんな類塾に通う新4年生以上の子どもたちとその保護者のみなさんへ向けて「親も子も話すこと、書くこと、自分が好きになる!〜言葉のマグネットで自分の言葉の世界をひろげよう〜」というテーマで、たっぷり2時間半お話をしました。

聞くところによると、当初は定員を50名にしていたそうですが、募集開始2日目には定員に達しそうになってしまい、急遽定員を70名に増やしたそう。当日は69名の人たちが集まってくれました。気合が入ります。
「こんにちは!」と言うと、元気な声で「こんにちは!」と挨拶を返してくれる類っ子たち。いつものように挨拶の大切さ、礼儀やマナーもさることながら、大きな声ですることがだいじなんだという話から講演はスタート。「挨拶の声の大きい者がその場を制する」という思いもよらなかった話に、子どもも大人もぐいぐいと惹きつけられていきます。

そして、この日の「約束ごと」を決めます。それは、発表者には惜しみない拍手とエールを贈ること。批評、批判の目で見ず、発表の中の良いポイントを学ぶこと。

この日の講演は2部仕立て。第1部は座学、第2部はワークショップです。

第1部の最初のお話は「心を強くする方法」。父親の仕事の都合で転校ばかりしていた小学生時代の逸話を紹介しながら、自分自身にレッテルを貼らないこと、親は子どもにレッテルを貼らないことと説きます。
なぜレッテルを貼るとダメなのか、レッテルを貼るとき脳はどういう働きをするのかという話を具体例も出しながら説得力を持って話します。でも、どうしても貼ってしまいそうになるときにはどうすればいいのか? その対処法を伝授することも忘れません。会場のみなさんはメモ、メモ、メモ。
「今日限りここには、算数が苦手な子はいない、口ベタな子もいない。だらしがない子も、作文がヘタな子もいない」。ひきたよしあきの言葉に、ぱっと顔が明るくなる子どもたち。
この日参加したのは子どもたちは、9歳〜15歳。この年頃の子どもたちに訪れる心の変化――小さい頃は平気だったのに人前で話すのが怖い、親がうっとうしい、他人の目や評価が気になる――はあって当たり前なのだという話へと続きます。
いまは子どもから大人へ成長している過渡期、自我が芽生える時期なのだから、もし、他人の評価や目が怖くなったり、親に対していらだちを覚えたら「自分は成長しているんだ。こういう時期なんだな」と思えばいいとの話に、今度は親たちがうなずいています。

「さて、それでも人の目や評価が気になってしまうときはどうしたらいいか?」。

そんなときには、と次の5つのメンタル強化法を伝授。

1. こっちから見る。
2. 2-6-2の法則。
3. 人生は地図である。
4. 「あ行」の力、「す」の力。
5. 「どうせ、うまくいくんだ」。
子どもたちはもちろん、一生モノのメンタル強化法に大人たちもメモをとる手が止まりません。みなさんが真剣に聞いてくれるのが嬉しくて、最初のお話「心を強くする方法」だけで第1部60分間のうち45分間も話してしまったひきたよしあき。時間配分に長けた氏にしては珍しい展開です。それだけ熱がこもったのでしょう。

「時間を巻いて、次は勉強のコツについて話します」。
ひきたよしあきが小学校4年生から6年生まで通っていた藤原塾で習得した勉強法です。藤原塾は灘中学校を受験する子どもが多く通う塾で、習字もピアノも続かなかったひきたよしあきが面白くて通いつづけた塾です。そこではまったく勉強を教えない。ただ一つ、勉強のやり方を教えてくれたそうです。そこで習得したコツの中から、この日は3つをご紹介。会場中から興味津々な空気が伝わってきます。

1. 難しいところに○をつける。
2. 授業のあとに今日習ったことを3つ思い出す。
3. 間違いノートを作る。
カッカッカッカッ…。メモを取る音が響きます。

第1部の最後は「話し方のコツ」について。時間が巻いているので展開が早いです。

1. どうしたら緊張しないか。緊張したときの対処法。
2. 話すときの発声のコツ。
3. 手のひらを見せる。顔の近くで手を振る。
4. 人を指差すときは円を描くように。
5. ケネディチョップ。

第1部の講義はここまでです。駆け足でしたが、雰囲気や様子が少しは伝わったでしょうか?(お伝えできていると嬉しいです)。

第2部ワークショップの模様は後半へ続きます→

3月の活動報告。

4月になりました。新年度の始まりです。

1月に新しい年が始まり、4月に新しい年度が始まる。
1月に取りこぼしてしまっても、4月に仕切りなおすチャンスがある。

仕切りなおせる、やりなおしができるというのは良いなぁと思います。

というわけで、今月から「前月の活動実績」を報告させていただくことにしました。
実はブログでご紹介しているのは、ひきたよしあきの活動のほんの一部。
なので、みなさまへのご報告と、本人の備忘録も兼ねて。

3月もよく働かせていただきました。
ありがとうございます。

3月6日(月)全国宗教用具協会 名古屋協議会講演
3月7日(火)潮来市立潮来第二中学校 講演(一般社団法人きてきて先生プロジェクトコーディネート)
3月8日(水)日経Xwoman10分動画アカデミー収録
3月9日(木)チラヨミ収録
3月15日(水)京セラ株式会社 研修
3月17日(金)東京冷機工業 研修
3月18日(土)博報教育財団「作文コンクール」表彰式
3月22日(水)京セラ株式会社 研修
3月25日(土)類塾 春季講習 講演
3月30日(木)大阪芸術大学放送学科ガイダンス
3月31日(金)schoo 講義

🌼「チラヨミ」「日経Xwoman10分動画アカデミー」はすでに公開されています。よろしければこちらも併せてご覧ください🌼

「チラヨミ」の動画が公開されました!

日経Xwoman10分動画アカデミー
【1】話が短すぎ、長すぎ…適切な長さとは~対面で話そうとすると「頭が真っ白に」…具体的に解決する方法~
【2】あの人は話を聞いてくれると思わせる技~「聞き流しそうめん傾聴法」「起承転結 質問法」…聞く力を引き上げるためのメソッド~
【3】「こうなると思っていた」言ってませんか? NG言葉集~身勝手、上から目線…会話をする際、絶対に避けたい北風言葉とは~

東京冷機工業株式会社(TO-REI)で社内研修の講師を務めました。

桜の蕾がほころびはじめた3月17日の午後、東京冷機工業株式会社(TO-REI:トウレイ)で社内研修の講師を務めました。13時半から16時半まで、3時間の大講義です。

TO-REIは1956年創業の、空調、換気、冷凍冷蔵、クリーンルームなど、私たちの生活に欠かせない空調設備の施工からメンテナンスまでを担う会社です。
会場は研修設備とショールーム機能を兼ね備えた「TO-REI成長支援センター」。昨年、新築移転したばかりのビルは新しい建物独特の清潔な香りがし、屋上からは東京スカイツリーや東北新幹線の線路が望める、見晴らしのいい環境です。

当日はここに、関東各地からおよそ50人の社員が集まりました。同僚との久しぶりの再会を懐かしんでいるのでしょうか、手をふる姿、笑顔で語り合う様子を見ていると、こちらまでほっこりします。
ひきたよしあきがTO-REIで講義をするのは、昨年に続いて2度目。前回は、始まりこそ緊張した空気が流れていましたが、研修が進むうちに場の雰囲気がやわらぎ、積極的な発言、笑顔、拍手に包まれました。その素直さ、真面目さ、明るさは、長く講師をしていてもそうは味わえるものではありません。自身の講義の中でも会心の出来、という思いがあり、実は心ひそかに継続を望んでいました。

なので、今回のお話をいただいたときは本当に嬉しくて、3時間の研修用に当日使うパワポを練り直し、講義に臨みました。
研修は、集中力を維持するために45分に一度5分間の休憩をはさみ、その短い時間で仲間たちとの親睦を深め、なごやかな雰囲気の中で、考え、書き、相談し、発表する。発表者には、必ず惜しみない拍手をすることをルールとしました。

皆さんがこちらを食い入るように見つめてくれる。真剣にメモをとってくれて、気軽に声もかけてくれる。講義は、昨年以上に楽しく、有意義なものになりました。

モニターに向かう業務が増えて、声を出す機会が減っています。挨拶をする機会さえ少なくなったように思われます。そんな今だからこそ、このような研修の必要性をひしひしと感じます。社員の皆さんが、だんだんと集中し、真剣な眼差しになっていく様子が忘れられません。

まだまだ教えたいことはたくさんあります。
できればまた来年もここで、皆さんに会えるといいな。

東京冷機工業、TO-REI。空気をきれいにする会社だけあって、そこで働く人たちの目も心も、澄んでいて美しかった。
素敵な機会をありがとうございました。

「チラヨミ」の動画が公開されました!

先日お知らせしました「チラヨミ」の動画が公開されました。

動画で紹介させていただいたのは、『博報堂スピーチライターが教える 5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』。

スタジオで収録した話をリズムよく編集していただき、話に合わせたアニメーションなども挿入していただき、さらりと視聴できる、それでいて本のエッセンスを知ることのできる8分30秒の素敵な動画に仕上げてくださいました(先日のお知らせより少し長めのたっぷり版になりました!)。

ぜひ、ご高覧ください。
そしてよろしければ、周りの人たちにもご紹介ください。

『博報堂スピーチライターが教える 5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』紹介動画(外部リンク)

チラヨミ(外部リンク)

以下は3月9日、この動画を撮影した日のブログの転載です。
こちらも併せてご再読くださいませ。

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【本日「チラヨミ」収録。】

人気ビジネス書のエッセンスを動画で学ぶことができるとあって、タイパ(タイムパフォーマンス)重視の若手ビジネスパーソンから絶大な支持を得ている「チラヨミ」。

ビジネス書を出している者なら、誰もが出演を願うこのビジネス動画プラットフォームの動画収録を、渋谷警察にほど近いスタジオで本日おこなってきました。

今回ご紹介いただくビジネス書は、2019年の発売以来たくさんの方に読んでいただき(現在33刷)、台湾、中国に続き韓国での出版も決まった『博報堂スピーチライターが教える5日間で話が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』。

この本のコンセプトや内容紹介などを、エッセンスを損なわず、なおかつその先が読みたくなる程度のさじ加減で、「チラヨミ」らしくチラリとお話ししました。これがさらに7分ほどの動画に編集されます。公開日時が決まったら、またお知らせしますね。
担当してくださったのは笑顔が素敵な酒井さんと千葉さん。お2人とも、ひきたよしあきのFacebookやWEBコラムなどをとてもよく読んでくださっていて恐縮するばかり。おかげでなごやかな雰囲気の中、リラックスして収録ができました。

気持ちよく仕事を終えてスタジオを出ると、渋谷は今日も春の陽射し。
南風に背中を押されて歩く足取りが軽いのは、おろしたての真新しい靴を履いていたからだけではないと思います。

また、皆さんとお仕事したいな!

チラヨミ(外部リンク)

潮来第二中学校の全校生徒に向けて講演をしました。「人にも自分にも強くなる話し方のコツ」

3月7日、茨城県の潮来第二中学校172名の全校生徒に向けて、「人にも自分にも強くなる話し方のコツ」と題して「言葉の力」について講演をしました。潮来に来るのは今回で3回目。広い大地と広い空、水がきれいな素敵なところです。

この時期の中学校は、3 年生は受験も終わり合格発表を待っているところ。2年生は間もなく最高学年となり、1年前は制服に着られていたような1年生もかなり中学生らしく成長しています。それぞれが間もなく進む次のステージへ、自信を持って行くことができるように、エールを贈る気持ちも込めて。
廊下には生徒会の生徒さんたちが作ってくれた「ひきたよしあきコーナー」が。いろいろ予習してくれていたんですね。
会場は体育館。
生徒会の生徒の「開会の言葉」「講師の紹介」に続き、いよいよ講演です。
「挨拶は、大きな声でした者がその場を支配できるんだよ」と講演はスタート。「今日の講演のテーマは心を強くする言葉。自分の経験も交えて、みなさんにいくつかのコツを伝授します」と話は続きます。

今回の講演内容は、大きくわけて3つに構成されています。
1つめの話は「話すときの法則」です。
面と向かうと弱気になってしまう、何を話せばいいのかわからない、相手が不機嫌で怖くて話せないなど、話すことに苦手意識を持ってしまった心を克服できるテクニックを、実践を交えながらアドバイス。
生徒たちが体を動かして能動的に講演に参加することにより場が温まったところで、続いて2つめ「スピーチライターが伝授する人前での話し方」。長年スピーチライターをしてきた、ひきたよしあきだからこそできるお話です。
人前に出て話すときに心を強く保つ方法、声を遠くまで届ける技、名前をはっきりと伝える工夫、効果的な手の使い方などなど、実際に政治家や企業のエグゼクティブたちへ指南してきた技術を、惜しげもなく生徒たちに授けます。
子どもたちも聞き逃すまいと真剣です。

3つめは、地元・鹿島アントラーズで活躍した元Jリーガー内田篤人さんの少年時代の逸話をひも解きながら「最強の自信を手に入れる方法」を伝授。自分と同じ歳のころの親しみあるヒーローの話だからでしょうか、生徒たちはみんな集中してメモを取っています。
最後に餞(はなむけ)の言葉の代わりに、「人生を一本道ではなく地図だと考えてほしい」と、フランスの哲学者ジル・ドゥルーズの考えを紹介しました。

「大きなゴールに向かって歩む人生は、一本道ではなく地図です。生きていれば動けなくなること、しゃがみこんでしまうこと、つまづいてしまうこともある。そんなとき、人生を一本道だと考えていると、自分だけが止まっている、後退しているように感じ、他人と比較して自分をダメな人間だと思ってしまう。でも、人生は本当は地図だから、ゴールに向かってどうやって行くかを考えればいいんです。後戻りしようが、斜めに行こうが、川を渡ろうが山を越えようが、いくらでも道はある。逃げ道だってある。逃げるということは決して悪いことではない、いわば作戦変更のようなもの。そして自分の地図と周りの人の地図は全然違う地図だということも憶えておいてほしい。だから、他人と比べて勝ちも負けもない。あなたはあなたの地図の中でどうやってゴールに近づいていくかということを考えて、自由に動いて歩んでいけばいいんです」。

会の終わりの「質問コーナー」では、今日の講演内容に関するものから、叱られたときにヘコまない方法、本を書いてみようと思ったきっかけ、はたまた趣味など、たくさんの質問が寄せられ、盛況なうちに会は終了。
最後に、この日一日ひきたよしあきをアテンドしてくれたKくんと握手。みんなの拍手に送られて会場をあとにしました。
控室となっていた校長室で、校長の根本 政世士先生、この会を切り盛りしてくださった立原 嘉久先生と生徒会の皆さんと記念撮影。みんなニコニコです。

今回、立原先生とやり取りして、この会をコーディネートしてくださったのは、“一芸に秀でた社会人講師”を自治体や学校、企業と連携してコーディネートする一般社団法人きてきて先生プロジェクトさん(以下、きてきて先生)。ひきたよしあきも長年大変お世話になっています。

実は今回もう一つ、嬉しいことがありました。
昼過ぎ、高速バスで「水郷潮来」に着くと懐かしい顔が。潮来市子育て支援課課長の実川さんです。実は何年も前、潮来市での初めての講演を実現するために「きてきて先生」とともにご尽力いただいたのが実川さん。今回は4年ぶりの再会です。お仕事の都合で今回の講演を聞きに行けないので、せめてもと思いバス停まで会いに来てくださったとのこと。忙しいお仕事の合間にわざわざ来ていただいたその心遣いに、嬉しい気持ちが弾けます。実川さん、ありがとうございました!

コロナ禍の3年間、したくてもできなかった子どもたちへの対面での講演。
今年はたくさんできるといいな。